頭の中のごみそうじです
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大仰なのやカラフルなのが目立つなかで、いちばん地味な部類に入るそれがわたしの目を引きました。すぐに説明文とともに写真を撮って、送りました。「星くずでできた刀があるよ」と。返信はめずらしくすぐに来ました。
三日後、わたしはまた同じビルの6階にいました。彼はずいぶんなあいだ例の展示の前で立ち止まって、ためつすがめつしていました。見た目はどうということのない鉄なのです。言われてみれば刃の表面が、水たまりにこぼれたガソリンのように細かく波打っているのがわかる程度で。それでも彼はしばらくじっとそこから動きませんでした。また頭の内側で宇宙に行っている、とわたしはあきらめて、他の展示と来館者をのんびりながめることにしました。
レストランのホットケーキは、思い浮かべる通りのホットケーキの味がしました。マーガリンとメープルシロップ。わたしがつくるときは必ずバターとはちみつにします。彼はとうぜん、違いをさして気にしていません。そういえば宇宙食を売っているお店が近くにあるよ、と言うと、彼はぱっと顔をあげました。昔飼っていた犬よりわかりやすい、と苦笑いがこみあげます。
ロビーの隅、エスカレーターにかくれるようにして、タイムカプセルがありました。いちばん長いものは、次に開かれるのが埋めた年の5000年後。ろくせんきゅうひゃくななじゅうねん。彼はていねいにたしかめるように何度もゆっくりつぶやきました。
いつか遠くない先に、とても現実的な理由で、この人は東京に帰るだろう、この人が帰るのは東京だろう、わたしはその確信のもと、毎日返ってこないメールを送り、噛み合わない話をします。どちらのためにもならない日々を、せっせとつなげて暮らすのです。
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