頭の中のごみそうじです
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大仰なのやカラフルなのが目立つなかで、いちばん地味な部類に入るそれがわたしの目を引きました。すぐに説明文とともに写真を撮って、送りました。「星くずでできた刀があるよ」と。返信はめずらしくすぐに来ました。
三日後、わたしはまた同じビルの6階にいました。彼はずいぶんなあいだ例の展示の前で立ち止まって、ためつすがめつしていました。見た目はどうということのない鉄なのです。言われてみれば刃の表面が、水たまりにこぼれたガソリンのように細かく波打っているのがわかる程度で。それでも彼はしばらくじっとそこから動きませんでした。また頭の内側で宇宙に行っている、とわたしはあきらめて、他の展示と来館者をのんびりながめることにしました。
レストランのホットケーキは、思い浮かべる通りのホットケーキの味がしました。マーガリンとメープルシロップ。わたしがつくるときは必ずバターとはちみつにします。彼はとうぜん、違いをさして気にしていません。そういえば宇宙食を売っているお店が近くにあるよ、と言うと、彼はぱっと顔をあげました。昔飼っていた犬よりわかりやすい、と苦笑いがこみあげます。
ロビーの隅、エスカレーターにかくれるようにして、タイムカプセルがありました。いちばん長いものは、次に開かれるのが埋めた年の5000年後。ろくせんきゅうひゃくななじゅうねん。彼はていねいにたしかめるように何度もゆっくりつぶやきました。
いつか遠くない先に、とても現実的な理由で、この人は東京に帰るだろう、この人が帰るのは東京だろう、わたしはその確信のもと、毎日返ってこないメールを送り、噛み合わない話をします。どちらのためにもならない日々を、せっせとつなげて暮らすのです。
埋立地を埋めるビル
ビル
海
夥しい街
数ある公園のどこにも痕跡はなく
こどもたちは屈託なくくもりなく
笑う
笑っている
あなたもとうにわすれてしまっただろう
車が過ぎりはしないかと
坂道 だまって目を凝らす
少年がそこらに居ないかと
あなたが打ち続けた点は
彼女が短い線につないだ
ようやく
わずかに
見えた
ひとりで
わたしはそれを聞いた
長いエスカレーターに乗り、外に出ると彼はやっぱりタリーズに向かい、甘い飲み物を買いました。そしてホットを選んだ私を怪訝な目で見ました。8日遅れて流れ出した痛みはずいぶん鈍く重く私を煩わせていました。ビルの屋上、憩いの場の隙間に植えられた稲。それを囲うロープにもたれ、彼はBtoCにつきまとう理不尽さを訥々と語り続けていました。私はまた、あの気分がこみあげてくるのを感じました。ことばがなんにも出てこなくなり、目を見ることができません。私は無駄口を叩かずに済むこの状態がきらいではないのですが、相手にとってはもちろんそうではないでしょう。夕食の時間に待ち合わせたものの、昼間、受け付けない場所で受け付けないものを食べるはめになった私はただでさえ胃がくたびれていました。彼も強いませんでした。JRの改札で、私は三宮までの切符を通しました。ほかにどうしようもないのです。それでも後悔が全身を苛んでいました。
あなたのことばを借りましょう、あなたの中にわたしはいない、わたしはそれを知っています。
あなたはすでに気持ちを東京に置いている、春に遣っている。
わたしはきっと終るに足る絶望を、さがしているだけなのです。
これがそれに足りないことを理解していながら、すがろうとしているだけなのです。
惰性です。あなたにはわたしを買いかぶる余地がなく、それも丁度よいのでしょう。
データを消すのと同じ手軽さで終ってしまえたら話が早いのに、そうはいきません。
私は生きて、老いて、あなたが唾棄するクレーマーのように、有害でしかなくなるのでしょう。
わかってください。誰に必要とされたいわけでもないのです。
はやく死にたい。
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