忍者ブログ

may be May

頭の中のごみそうじです

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

pieces of stars

 大仰なのやカラフルなのが目立つなかで、いちばん地味な部類に入るそれがわたしの目を引きました。すぐに説明文とともに写真を撮って、送りました。「星くずでできた刀があるよ」と。返信はめずらしくすぐに来ました。

 三日後、わたしはまた同じビルの6階にいました。彼はずいぶんなあいだ例の展示の前で立ち止まって、ためつすがめつしていました。見た目はどうということのない鉄なのです。言われてみれば刃の表面が、水たまりにこぼれたガソリンのように細かく波打っているのがわかる程度で。それでも彼はしばらくじっとそこから動きませんでした。また頭の内側で宇宙に行っている、とわたしはあきらめて、他の展示と来館者をのんびりながめることにしました。

 レストランのホットケーキは、思い浮かべる通りのホットケーキの味がしました。マーガリンとメープルシロップ。わたしがつくるときは必ずバターとはちみつにします。彼はとうぜん、違いをさして気にしていません。そういえば宇宙食を売っているお店が近くにあるよ、と言うと、彼はぱっと顔をあげました。昔飼っていた犬よりわかりやすい、と苦笑いがこみあげます。

 ロビーの隅、エスカレーターにかくれるようにして、タイムカプセルがありました。いちばん長いものは、次に開かれるのが埋めた年の5000年後。ろくせんきゅうひゃくななじゅうねん。彼はていねいにたしかめるように何度もゆっくりつぶやきました。

 いつか遠くない先に、とても現実的な理由で、この人は東京に帰るだろう、この人が帰るのは東京だろう、わたしはその確信のもと、毎日返ってこないメールを送り、噛み合わない話をします。どちらのためにもならない日々を、せっせとつなげて暮らすのです。

PR

ノーウェアトゥゴー

朝のいろを思い出す
星の数よりも夜の声を
ととのい淀んだ同じ水

迎えに来てオレンジで
青いの確保して待ってる
カボチャは随分ガタが来て
だから赤い道からおいでね

きみは北から
わたしは東へ
半直線のはじまりを
夢といっしょに持て余して
だからもう一度預けあおうか

Summer will

埋立地を埋めるビル
ビル

夥しい街

数ある公園のどこにも痕跡はなく
こどもたちは屈託なくくもりなく
笑う
笑っている

あなたもとうにわすれてしまっただろう
車が過ぎりはしないかと
坂道 だまって目を凝らす
少年がそこらに居ないかと

あなたが打ち続けた点は
彼女が短い線につないだ
ようやく
わずかに
見えた
ひとりで
わたしはそれを聞いた

サムシング・ドラスティック

長いエスカレーターに乗り、外に出ると彼はやっぱりタリーズに向かい、甘い飲み物を買いました。そしてホットを選んだ私を怪訝な目で見ました。8日遅れて流れ出した痛みはずいぶん鈍く重く私を煩わせていました。ビルの屋上、憩いの場の隙間に植えられた稲。それを囲うロープにもたれ、彼はBtoCにつきまとう理不尽さを訥々と語り続けていました。私はまた、あの気分がこみあげてくるのを感じました。ことばがなんにも出てこなくなり、目を見ることができません。私は無駄口を叩かずに済むこの状態がきらいではないのですが、相手にとってはもちろんそうではないでしょう。夕食の時間に待ち合わせたものの、昼間、受け付けない場所で受け付けないものを食べるはめになった私はただでさえ胃がくたびれていました。彼も強いませんでした。JRの改札で、私は三宮までの切符を通しました。ほかにどうしようもないのです。それでも後悔が全身を苛んでいました。

あなたのことばを借りましょう、あなたの中にわたしはいない、わたしはそれを知っています。
あなたはすでに気持ちを東京に置いている、春に遣っている。
わたしはきっと終るに足る絶望を、さがしているだけなのです。
これがそれに足りないことを理解していながら、すがろうとしているだけなのです。
惰性です。あなたにはわたしを買いかぶる余地がなく、それも丁度よいのでしょう。

データを消すのと同じ手軽さで終ってしまえたら話が早いのに、そうはいきません。
私は生きて、老いて、あなたが唾棄するクレーマーのように、有害でしかなくなるのでしょう。
わかってください。誰に必要とされたいわけでもないのです。
はやく死にたい。

かよわない

私は電気を点けることもせず、敷いたままの蒲団のうえに倒れました。電池の減ったiPhoneを開き、バスを降りてから十分の間に何の着信もないことを確かめました。震えないそれを充電器につなぎ、いとおしくて吐きそうな男の名前をつぶやきました。自分でもおどろくほどに声に力がありませんでした。

 
彼は用心深すぎるくらいに周到で、そのくせ詰めが甘いのでした。どちらの部屋にも切らしてから、彼は準備をしなくなりました。「万が一」をおそれはじめたのだと、私は途中で察しました。
 手遅れかもしれないよ。私はやや意地の悪い気持ちで思います。実際、アプリのカレンダーに最後に記録したしるしは着実に遠ざかっていました。能天気なメッセージはあらわれなくなり、受診するように、と強めの薦めが強調されて、しばらく経ちます。


杞憂かもしれません。僥倖かもしれません。あるいは最悪の展開かも。
常識を持ち、将来を得たばかりの彼がどう言うか、それはもちろん決まっています。
考えることは億劫で、考えないことは困難なので、はっきりする前にこと切れることがかなえばいちばんいいのです。
頸動脈をみずから掻き切るという方法は、たとえばあの美しい小説の男のように、虚構の中のものだと思っていました。しかし、あの有名な遺書を書いたアスリートが、そうして死んだのを最近になって知りました。


 私には当然できないでしょう。凡人が人並みの生活をするには人並みの努力が必要に決まっています。どうやら私にはそれがわかっていなかったようです。無能なまま無為に歳をとりました。Better late than never、果たしてほんとうにそうでしょうか。安吾はきっときっぱりとノーと言うでしょう。


うつくしくなりたいと思ったことはありません。ただ人並みにあこがれてきました。
私は私であることを恥じつづけてきました。
私の苦はそれに尽きます。私であることを肯定されても困ります。
やすらかに断てるように祈ってください。
私は誰も恨んでいません。恨むほど誰にもコミットすることができなかったのです。
血が通っていないようだと、ずいぶんな人に言われました。おそらくそれは正しいので
しょう。


いつのまにか頬を生理的な涙がつたっていました。わずかに残った人間らしい血がそこからすべて流れ出て行ってしまうような気がしました。

カレンダー

11 2024/12 01
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

フリーエリア

最新コメント

最新記事

(11/27)
(11/25)
(11/23)
(11/20)
(11/18)

プロフィール

HN:
とるて
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

最古記事

P R

忍者アナライズ