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may be May

頭の中のごみそうじです

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私を見つけないで

綺麗な朝
綺麗な街
かまびすしい部屋
頭に入らない文字

助けて
助けて
早く済ませて
早く連れ出して
私を見つけないで
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マドンナ・リリー

暗くなってから降りて暗いうちに乗る
京都までに夜は明けるかしら

マドンナ・リリーの相応しい人
私の前には今も彼女しか居ない

二年後を恃みに歩く
道を分かれたいまも

あなたがいるから勝たなくていい
あなたの他には負けられはしない

ただの父親になったあの人にいつか
報せに行こうすっかり追い抜いた事
二人で

造花に水を遣り続ける
生きていれば根腐れしているだろう
白い花の色は落ちない

Dream in the garbage

出会う前をもう思い出せない
それからのことはつかみどころがない

お酒も映画も要る訳がなかった
背中あわせに歌をギターを
聴いて居たかった
勝手に泣くわたしに構わずに
夜が明けるまで、そうして

だけど精一杯だったんですよ
"So what?"
分からないなら、かなしいひと

物質として寄り添いたい
心を持たない人形に
一晩だけ心を渡して

差しだせるとすればこの耳だけだったんだろう

それはただの容れ物
胸を占める空虚にかたちを与えるための殻
意味深なフレーズにデザイン以上の役割はない
偶にそっと紛れているだけ

それがただいとおしかったの
抱きしめて居たかったの
もし、わたしがわたしでなかったら

わたしがわたしでなかったなら

MORE&more

あのふたりのひとつだけ
再生してまた泣いていた

わたしが不意に口ずさむのは
先に親しんだ、あまのじゃくなカバーのほうだけど

その不誠実がいっそ誠実に映る、いい加減なこの距離をどうしたものだろう
欲しいもの、それが分かれば、この手を離さないで居られるかしら
離れているときでも忘れないでしょう忘れないから、そればかり頭を離れなくって

悲しい気分のときに都合好く思い出してくれればいいと思う
どこに居たって春の終るその日に誰より傍で寄り添っている
絶対に隔たらないきみでさえ、わたしはまもれやしなかった

「鍵は要らないから扉にもたれていることをゆるして
間に誰も居ないことを疑わないで
怖がらないと誓って
きみは、きみを厭うその理由でわたしのことも軽蔑するの?
見てきたでしょう全部、それは信じられるでしょう
わたしにしか言えないきみにしか通用しない、
顔を上げて」

夏が始まる

秒針

 彼女の右眼は歯車を映さなかった。代わりに左耳が秒針の音を聞いた。然し左手首の腕時計とは微妙にズレのあるそれは若しかするとくたびれたメトロノームの刻む音だったのかもしれない、ともかくそれは彼女がどんなに深くカナル型のイヤフォンを捩じ込んでもその内側でカチカチと鳴った。気づくと消え、また始まった。彼女を苛立たせはしても片頭痛程には煩わせないそれを彼女は諦めを以て迎えた。
 
 彼女は殆どあらゆる事に不得手を感じた。彼女は自らを俯瞰しえたらその容姿と挙動を観察する行為に五分と耐えきれる自信がなかった。喧騒に対し不快よりも恐怖を覚えた。喧騒のほうでも度々聞えよがしに彼女を嗤った。彼女の理性は彼らの正常に寧ろ安堵した。然し感情は張り詰めていた。

 彼女は教壇の目の前の、最も忌避される即ち最も安全な席にすすんで着き、教師の的を得ない話を几帳面なノートの上に構成し直すことに集中した。教師にとってこの上なく御しやすい生徒と看做された彼女はクラスの手本として名前を挙げられた。彼女は当初教師は教師といういきものなのだと思っていた。然し或る時期から教師も人間であり、授業時間外になれば模範生への興味を欠いた只の人に戻ることを悟った。彼女は休憩時間になると教壇からも遠ざかり、自らに寡黙を強いて無心に楽器を叩き続けた。
 
 彼女は何年経っても、寧ろ年数が経過するごとに、転校生以上にストレンジャーである自分をみとめずには居られなかった。彼女の周りには、彼女よりも頭を遣う事に長けていながらも級友たちと朗らかに馴染んでみせる男女が、多くはないが確かに居た。だから意識次第なのだとは判っていた、然し彼女には困難というよりも不可能にしか思われなかった。彼らは大抵彼女にもこだわりなく接した、彼女も彼らを級友として好ましくまた誇りに思った、それが一層彼女を惨めにした。

 彼女はそれでも時々は仄かにやわらかいベクトルの噛み合うドラスティックな錯覚に見舞われることもあった。然し長持ちはしなかった。それは錯誤というより自己に対する心裡留保に近いものだったに違いない、彼女の愛が在りえるとすればユダのそれであるということに、彼女は薄々気が付いていた。

 彼女はよく眠りよくものを食べる。その生活に長い名前の薬をひとつも必要としない。手首に刃物を宛がったこともない。然し彼女の左耳はこの瞬間も一分間を六十回に分けた間隔で針の振れる音を捉え続ける。あの遺稿の末文を脳裏に繰り返し反芻しながら。

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