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may be May

頭の中のごみそうじです

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The only heaven I know

 I'm all alone。
 それでいい。否定しないから。「でも」も言わないから。気が済むまで泣いたらいいよ。
 そうだね。あなたはどうしようもないろくでなしだね。醜くて、怠惰で、頭も良くない。偉そうなだけの能無し。生きている価値なんて思いつかないよね。死んだ方があなた自身のためかもね。あなただけの話じゃないけど。
 しかもそんな粗大ゴミみたいな人間のくせに誰も信用できないんでしょう。おこがましい。友達ぶってる彼も彼女も例外なく見下しているんでしょう。そのくせに愛想を尽かされないように予防線を張って。見苦しい。
 どうしたいんだって話だよね。
 あなたは間違いなく孤独だし、それはほとんどあなたのせいだ。
 愛してほしい?じゃあ愛してくれる?
 ほら、できない。
 全肯定?…できると思う?
 赤の他人だから、あなたがどんなにくだらなくたって構わないだけだよ。興味ない。赤の他人で居る間は。
 だから、泣くならここにしなよ。見てるぶんには面白いから。飽きない保証はできないけど。

 ああ、さっさと終らないかな。
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Man we'd love

 この人の死に際は想像しやすい。まず老衰ではない。病院のベッドの上でもない。どこかへふらっと飛び出して行ったきりそのまま帰ってこなくなるのがしっくりくる。そして遠因となった人たちはこぞって不慮の死を遂げた彼を仰々しく悼み、祀り上げる。こちらはもっとたやすく想像出来る。

 旅から帰るたびに刺青が増えている。旅はいつも長く、無茶だ。行ったことがなく、かつインフラのできるだけととのっていない地域を選び、買い物に行くみたいな恰好で飛行機に乗る。帰る日は決めずに出る。滞在期間が1カ月のときもあれば、半年以上帰ってこなかったこともある。目的もなくなぜそんなところにそんなに長く、と周りは不思議がる。一部は、逆になぜ帰ってくる気になるんだろうと首をかしげる。

「俺に日本は合わないから。そして、俺は日本人だから」
「俺の理想郷はこの国にはないんだ。同時に、俺の故郷は千葉の端にあるあの町なんだよ」
「俺にも、誰にもどうしようもないことなんだ」
 彼はたとえばそういう言葉で説明する。それ以上のことは言わない。

「幸せだ、今は。嘘みたいだ」
 大仕事を終えたばかりの彼は穏やかに笑う。嘘ではないのだろう。良かったですね、と涙を滲ませて人は言う。
 声は冷えている。
 先の見えない急斜面を、トロッコは歩くような速さで上がる。
 快適に、着実に。
 その音が何人に聴こえているだろう?
 彼が彼である限り、ゆるやかな上昇は急降下の前触れでしかありえない。
 彼は広がる絶景を見て満足の微笑みを浮かべた。

トモコさん

 トモコさん、雪だよ。せやな。トモコさん、寒いね。せやな。トモコさん、暑い?せやなあ。
 トモコさんはきょうも手づかみでごはんを食べ、お盆のうえに零れた一部をお箸でひろい、ぼたぼたと無頓着に服を机を汚す。
 見つけたMさんは金切り声をあげる。何度も何度も、同じ叱責を繰り返す。不安定の度合いで言えば、どちらも変わらない。
 トモコさんと二人のとき、わたしは比較的ことばを選ばずに話す。

「ごめんね、トモコさん」
 目やにの目立つつぶらな目は、どこを見ているのかわからない。
 かわいそうになあ、とトモコさんは言う。
「あんたは器量も良うないし、不器用やし、せやのに気ィばっかり強うて。ほんま、不憫やわ。堪忍してや、どうにかしてやりたかったんやけどなあ、うちも。せめて男やったらなあ。女はあかんわ。うちも女やからってどれほど苦労してきたか、わからんやろうけどなあ、あんたみたいに恵まれてたら、せやけどほんまに」
 不快なぶん、文字通り受け取れば済んで、気楽ではある。
 トモコさんの話はいくつかレパートリーがあって、しかも台本があるみたいに決まった語り口で披露される。何度も聞かされたわたしはその言い方までそっくり再現できる。だから苛々しているときは話を先取りして強引に完結させてしまうこともままある。だけど最近、そういうことは少ない。

 ごめんね、トモコさん。
 わたしにもう少し甲斐性や思いやりがあれば、もうあなたが随分していない遠出をいっしょにしてあげられるのにね。京都は止そう。伊勢も。あなたが憶えているどこも避けよう。良い思い出はそのままにしておこう。それ以外の、あなたが知らない、行きたい場所なら、どこへでも。
 きのう、することがないから一日中観ていたアニメの中で、ヒロインの女の子が言っていたの。「女は生きてるだけで偉いんだから」。そのとおりかもしれない。わたしもトモコさんも生きているだけで偉いのかもしれない。
 でも、Mさんはわたしたちを持て余しているみたい。ごくつぶしを二人も背負い込んだ貧乏くじをあちこちで嘆いているかもね。事実としてそうかはともかく、問題は仮に事実であった場合に、わたしたちがMさんに反論できるかということだと思う。そうするとやっぱり荷物をまとめるべきなんでしょうね。
「ごめんね、トモコさん」
 いっしょに消えてあげられなくて。
 ほんまにあんたはあかん子やなあ、とトモコさんはいつもの調子で呟いた。

Just make it loud

 あけましておめでとう。そして初めまして。彼女は死んだよ(なぜこのとき疑いなく彼女が彼女だと分かったのか、僕にはわからない)。
 歩こうか、少し。道中、吸っても?(この問いかけに頷いてしまったことも、謎だ。)別に、おまえのお利口な良心を叩き起こしに来たわけじゃない。嫌がらせのつもりもない。もちろん彼女からは何も頼まれていない。ただ、彼女は死んだんだ。信じなくてもいいけど(男は一本目を携帯灰皿に押し込み、次の一本を赤い鳥が刷られた白い小箱から押し出す。火をつける。その一連の動作が実にさまになっている。僕はなんとなく気後れする)、どちらにせよ、実感は湧かないだろうな。そういうものだ。目の前で死なれたってそうなんだから(男はやや自嘲気味になる)。
 仮に俺がほんとうのことを喋っているとして、おまえはどう思う?何を感じる?(橋の上で男は立ち止まる。河原で凧あげをする家族を眺めて微笑む。男はそのまま橋を渡る。)
 死因を訊かないな。自覚はあるみたいだな、お坊ちゃん。

 責める気も脅す気もないさ。少しでも彼女を知っていて、かつ彼女に僅かでも同情する人間ならそんなことはしない(暗に、僕はそうでもない、と言われているようで、僕は反射的にむっとした。しかし男からは優越感めいたものは感じられなかった)。ああいう奴だ。生きてさえいればと、かんたんには言ってやれないだろう?

 この行動の意図?さあ。おまえは近いうちに死んでしまう女を捨て、女の死をおまえに知らせに来る人間が居た、ただそういう巡りあわせだったんじゃないか。
 そしてこのまま行けばおまえは、親族や旧友に対して憚ることのない社会的地位を手にし、よく出来た妻子とともに地位に見合う生活を送る。滞りなく老いて死ぬ、かどうかはまた、それも巡りあわせだな。God only knows、そんなタイトルの曲がひとつくらいは、おまえの気どったiTunesライブラリにも収まっているはずだ。
 そう、この手のことは、おまえのほうが心得ているだろう?

(長く、長く歩いた。歩き慣れている僕も次第に足が重くなってきた。男は少しもそんなそぶりを見せない。ついに東端まで来て、男は足を止める。)
 怯えるなよ、何もしないって言ってるだろう。そんな理由はないんだから。そうだな、最後にひとつだけ言うとすれば、俺はおまえみたいな奴の書いたり描いたりするものには一切興味がない。むしろ目にすれば反吐が出る。どんな酒も不味くなる。その自信がある。そして俺は俺の感性を信用している。だからこれは、どちらかと言えば親切なアドバイスのつもりで聞いてくれ。

 じゃあな。

 (絶妙なタイミングで後ろから来たバスに、男は行き先も確かめずに乗り込んでいく。バスが発車するのを見届けて、僕は来た道を戻る。早足で。途中からは駆け足になった。息を切らして自室に戻り、ヘッドフォンを耳にあてる。なんでもいいから、ラウドな、ぐちゃぐちゃの。ボリュームをでたらめに上げる。鼓膜がいかれればそれはそれでいい。落ち着いたら僕は、引き出しの中のノートの束と、ハードディスクにこつこつと溜めたデータを纏めて処分しなければ、と誓った。呼吸はまだととのわない。)

恋愛スピリッツ

 菊地。
 菊地。
 菊地。

 あたしなんて、死ねばいい。

 あたしは条件も金額も手ごろではないし、チェンジするかどうかを毎回丁寧にたずねる。それでも門前払いの経験はない。指名は絶えずに増えていく。あたしには値打ちがある。だからあたしは菊地に会うとき一切それを纏わなかった。髪をまとめ眼鏡をかけ、ジーンズにママチャリで会いに行った。どの男とも違う菊地は同時に彼らとなにも変わらないふつうの男だから、容易に落ちてしまうと知っていた。あたしはもちろん菊地にあたしを見てほしかった。でもそれはただのあたしである必要があったのだ。
 菊地に電話をするタイミングをはかるとき、次に会う日が決まったとき、田舎から送られてくる設定の野菜をスーパーで選ぶとき、あたしはふつうの女の子が味わうような幸福感を味わえた。あたしはそれでじゅうぶんに満足だった。決定的なあの日までは。
 
 何をしていても消えない。一瞬だけ見た後姿、可愛いシュシュでまとめた茶髪。それに触れる菊地の手。そして笑顔。
 菊地の部屋に転がっていた、綺麗なオレンジのマニキュア。この部屋のどこにもないその柔らかい色を思い出しながら、いちばん濃い紅を引く。
 
 バカな男。あたしの気持ちを知っていて、どうぞって部屋に上げておいて、拒めなかったくせに朝になれば目を逸らして謝らずには居られない、女々しい男。
 あたしの髪でも見つかって、問い詰められて終ってしまえ。

 苦しい。
 バカはあたしだ。菊地がそういう男なのを知っていて踏み越えたのはあたしのほうだ。
 死ねばいい、殺して欲しい、死にたい、死ね、死んでよ。頼むから。
 何度も、右手の爪で左手首をかすめた。血が出るには至らない。あたしにはそういうやりかたは出来ない。
 そして菊地も、自分の所為であたしが死ぬことには耐えられない。
 正しい結論に至るには、どちらも自分に甘過ぎる。

 話そう、菊地に。全部言おう。
 菊地には最後まで言わせない。
 そして、あたしには菊池しか居ないのだと、菊池に選択の余地はないのだと突きつけるのだ。

”神様

 ほんとは
 あなたなんていない。

 あたしはこんなふうに
 菊地を手に入れるのだ”

(ストロベリーショートケイクス/秋代)

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