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may be May

頭の中のごみそうじです

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スカンジナビア

死ぬ値打ちのあることについて考えている。
死ぬ値打ちのあることについて考えている。

目覚め、受信はゼミMLのみ、水を撒く音、TL、802、サザンの復活、くもり、オフィスのダウンロード、虚偽表示のレジュメ、炊飯、シャワー、この剃刀では何も切れない。この階からでは気をうしなえない。

300分の授業と、そのあとの補講、そのあとの集まり。
借りた本と脱いだ服。
真夏日。

バケツいっぱいの絵具をひっかぶれば?
湖の反対側から、鳥になって飛んでみれば?

「キャノンの一番安いプリンタ」。
奨学金の話をやめないクラスメイト。
坂の下の家の家賃。

君に会いたい?果たして?本当に?
未来は頷くに違いない。違いない。



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JUST UGLY

 正直向こうが本気とは思えないし、きみがそれをわからないとも思えない。理解できない。
 虫の居所が悪かったぼくは歯を磨きながらそうぼやいた。
 彼女はまるでひるまなかった。
 私、ファーストフードは好きじゃないんだけど、それでも年に一、二回はマクドナルドのポテトがむしょうに食べたくなるの。それとおんなじことじゃない?
 彼女は口紅を塗り終り、口元を引き結んで色をなじませ、心なしかうれしそうに、鍵を手にして出ていった。
 化粧、へただし、似合わないからやめたらと、けっきょくいつも言いそこねる。

 
 彼女も対等な友達もいない、メールマガジンも登録しない、それでもぼくのiPhoneは沈黙し続けることはない。天気予報を確認しようとロックを外したら、ちょうど鳴った。ユウキだ。ぼくはすぐに既読にしてしまわないように、こわごわLINEを開く。不快な内容でないことを確認して、トークのページに移る。今日発売の漫画の新刊を買ったかどうか、買ったら貸してくれ、そのメッセージにくまのスタンプが添えられている。買ったよ、わかったまた今度持ってくね、笑顔の顔文字。送信して、既読になるのを確認する前に素早くLINEを閉じ、ぼくは方向を変え、本屋に向かう。ユウキは明後日バイトが休みだから、明日の夜に来いと言われる可能性が高い。それまでに読んで感想を言えるようにしておかなければ。

 ユウキは悪いやつではない。たぶん、ぼくがこんなふうに怯えているとは想像していない。ただぼくがなにも言わないから、ぼくは気にしない性質なのだろうと踏んでそれにあやかっているだけだ。一度くらいおまえが来いよとおどけてみせても彼は機嫌をそこねないだろうし、冷たく突っぱねれば反省してすなおに謝るだろう。わかっている。ユウキは悪いやつではない。ただどうしてもぼくにはそういうことはできない。


 誰かの人生において役割が欲しい、できれば自然発生的に、運よく偶然、あてがわれたい。流れにまかせてそこにたどりつきたい。選ばれたい。選ばれたい。選ばれたい。
 ぼくらはたしかに被害者だ。相手を責めるに足るクリーンハンドを必死で保ち、そこに居座り続ける愚者だ。
 醜い。でも自ら断てるわけがない。関係も、生活も、人生も。
 だから誰もに見限られる。彼女は早晩捨てられるし、ユウキもぼくに飽きるだろう。
 それでもぼくらはきっとただ傷をなめあっているだけなのだ。

K点

 私は土砂降りを待ちました。ひとけのない海岸で、雨に打たれるのを待ちました。しかし、iPhoneの天気予報は肝心なときにあたったためしがありません。その日も白い、無害な雲しかついに現れませんでした。

 赤道直下の墓地を思います。決して枯れない花であふれたその光景を瞼の裏に浮かべます。手向けた人々が眠りについても、花は鮮やかなままそこにあります。酸性雨に溶かされて、かたちをとどめなくなるまで。

 「人生を有意義にしたい」と嘆く人にプレゼントしたいのは、ピストルと弾をひとつずつ。
 ここにそれがあれば私はこめかみに銃口をあて、何分の一かの確率を信じて引き金を引くでしょうか?
 わかりません。現実にはそのすばらしい道具は手元になく、私は果物ナイフで腕を切ります。

 かわいたバスルームで、だらだらと流れる血を見ながら、私はしらけた気持ちになります。テレビドラマで演出される流血はあまりにもちゃちな気がしていて、でもほんものの血液もこうして見ると実際大差ないのです。赤というより朱色のその、絵具のような液体が、肌に服につたう様子を私は黙って見ています。

 痛みはあとから来ます。こうしている間はそうでもありません。あの映画の中の彼女もけろりとしたものでした。スクリーンの中のあの赤色は本物に見えました。いまも本物だと思っています。もちろん、私には血相を変えて飛び込んでくる正体不明の知り合いはいません。だから自分でタオルを巻き、きつく留めます。

 みんなわかってくれるよ、と昨夜、電話で友達が言いました。
 私はその子を信用しているので、ありがとうという社交辞令は止しました。

 先生。貴女にお墨付きをもらった私はだれのこともおそれていません。
 だれひとり敵とは思いません。
 ただ、私は、わたしが、ただ。
 
 

dear

信じることがどうしてわるいのだろう
どうぞくびりころしてください
きょうもひとりでバスを待ってる

愛しているっていうのはもっと
渋々でなければ
ああどれもこれもくすんで曖昧
くっきりと透き通ったゼロであってよ

やさしいうるさい真っ暗を思い出すよ
赤い道歩いて波のうえゆられたいよ
いつも逃げ出したかったけど

褒めてくれなくっていい
かわらないで

断片

 八月でした。わたしは右の耳で波の音を聞いていました。左の耳はあの人の腿におしあてていました。彼は器用に片手でページをめくりながら、茶色く褪せた文庫本を読んでいました。ずいぶん前に亡くなったおじいさんが、元気なころに一から自分でつくった、壁のない小屋のような休憩所でした。
 
 わたしたちは番人のように毎日そこで過ごしました。気が向けばざぶざぶと水に入り、疲れたら小屋でこてんと眠り、からだが乾けば数十メートル先のうちに帰りました。
 
 冷蔵庫はふたつあって、緑のほうにアイスがストックされています。彼はバニラとか、みぞれとか、そういうものしか口にしません。わたしは舌の色が変わるようなのを好んで選んでいました。広いあがりかまちに腰掛けてアイスを食べていると、近所のおばさんがひび割れて商品にならないたまごを数ダース、分けに来てくれます。このおばさんはいまでは夫に先立たれ、関東に住む息子夫婦のもとへ行ってしまいました。

 わたしはおばさんにお礼を言い、アイスを渡し、シフォンケーキを焼いたら持っていく約束をします。チョコレートを混ぜたシフォンケーキがわたしのお気に入りなのですが、ふつうのよりもたまごをたくさん使うため、こういうときでないと思い切ってつくれないのです。さっそくわたしはキッチンに立ち、もらいたてのたまごを卵黄と卵白に分け、卵白のほうを冷凍庫にしまいます。少し凍らせるとメレンゲがいい具合になるのです。そのころのキッチンはまだIHではなかったので、わたしは湯せんでチョコレートを溶かしました。彼はシフォンケーキではなくて、残った卵黄でつくるクッキーのほうを待っています。珈琲をいれるのがじょうずでした。

 死にたい、とこぼすと、その裏にあるもっとずっとたくさんの白とも黒ともつかない自分でも把握できないもろもろをそれだけで心得たように、彼はわたしの髪をなでるのでした。
 わたしは幼さという免罪符がある自分が彼のぶんまで言ってあげようと、そんな気になっていたのかもしれません。よく泣きました。喚きました。わたしは「いい子」でした。そうでないことをどうしようもなく自分でわかっていました。

 「だいじょうぶや」。そのトーン、右手にしていた指輪がいつもつめたかったこと、香水の清潔なにおい、よくない顔色。

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