あのふたりのひとつだけ
再生してまた泣いていた
わたしが不意に口ずさむのは
先に親しんだ、あまのじゃくなカバーのほうだけど
その不誠実がいっそ誠実に映る、いい加減なこの距離をどうしたものだろう
欲しいもの、それが分かれば、この手を離さないで居られるかしら
離れているときでも忘れないでしょう忘れないから、そればかり頭を離れなくって
悲しい気分のときに都合好く思い出してくれればいいと思う
どこに居たって春の終るその日に誰より傍で寄り添っている
絶対に隔たらないきみでさえ、わたしはまもれやしなかった
「鍵は要らないから扉にもたれていることをゆるして
間に誰も居ないことを疑わないで
怖がらないと誓って
きみは、きみを厭うその理由でわたしのことも軽蔑するの?
見てきたでしょう全部、それは信じられるでしょう
わたしにしか言えないきみにしか通用しない、
顔を上げて」
夏が始まる