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may be May

頭の中のごみそうじです

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18

聞きたいことばはやまほどあって
あなたはいちども与えてくれない
だけど言ってほしくないことも
決して口にしないから

少しだけ輪郭がゆるんでいく
わたしらしいわたしじゃなく
ただ勝手にあらわれるまま
ほんの少しだけそんなふうに

遠いのはいつものこと
遠ざかるのは慣れない

放してはいけないと
そうするべきではなかったと
言う人
違うの
もともとここにはなかったのよ
わたしのものではなく
あなたのものでもなかった
ただ よく出来過ぎていただけ

こんな日にはいろいろと忘れて
あっさり戻りかけてしまうけど
終ってしまったことだった

春が 来てしまう
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'Cause I hate myself

落ちこぼれとしても不適格で
気が合った気になっていたのかな
それともただ
待ち焦がれていた打擲を
任せるのに好都合だったのかも

あなたの気持ちになることは容易過ぎるくらいで
こころが幼く弱いだけ

どうでもいい人とばかりつるんで
不純さを競い合っていないで
黙ってギターを弾けばいいのに

イノセンスのなごりをかきあつめて
唄えばいいのに
わたしが聞くのに

会ってももうしょうがないけど
たとえばあの人がもういちど歌い始めたら
同じフロアに 独りで
あの部屋を知らない頃の気持ちで

どうぞ、お健やかに。
いつまでだって憎んでいる

F&Z

完全な人工海水と擬岩
噛みつくことを知らないまま

男の子はやっぱり怖いし、嫌だ
あの人たち、自分を無害だと思いこんでいるみたい
ぞっとする

フラニーって呼んでくれてもいいよ

青いね
きれい

この泡みたいなifで
飽和してしまいそう

水槽の向こうのあなた
透明で絶対の仕切り

決定的なふたつのことば
どちらもまた飲み込んで
そろそろ髪を切りなよって

肩の鮫
胸の鷲
人差し指のブラック・オニキス

好都合だから借りているだけ
京都から遠く離れて沈みたいよ

分かって
分かった気にならないで
知ってて
思うのはとどかない人にだけ

致命的な弱みを握るのがすなわち信頼で
愛はつまり破滅を見届けたいという願い

繰り返し繰り返し反芻して
あとは希釈し続けるだけだと
信じていたあれがたとえば
イノセンスと呼べるもの?

継ぎ足されて濁って跡形もない
愛しているってもはや
うわずらないそんな言葉に
生きた何かを込める隙間は

訊きたい
あなた
守るものの存在は
積極的な理由ですか
消極的な口実ですか

ハッピー・バースデイ
坂の勾配に
潮の匂いに
わたしの知らないいつかのあなた

始まり

 女は黄金の髪をしていた。いわゆる金髪ではなく、文字通りゴールドの、重みのありそうなロングヘア。非常識なその色をそれでもどこかで見た気がする、と男が記憶をたどり始めると、女が振り向いた。男はそこで思い出す。アメリカ人フォトグラファーが撮った、アイスランド出身バンドのミュージック・ビデオ。その中でニューヨーク・シティを闊歩する女性が同じ色の髪をしていた。髪と服装に比べると取り立てて目を引かない顔だちもよく似ていた。憶えている映像と違うのは、目の前の女が時代錯誤な仰々しい着物を着ていることだった。女はもちろん目立っていたが、その奇抜さは退屈に倦んだ東京の繁華街では居なくもない程度だった。だから誰も、女が異世界の住人ではないか、といぶかしみはしなかった。

 男を見つけた女は息を呑んだ。見つけられた男もたじろいだ。どうしてこの人波のなか、ピンポイントで自分なのか。女は構わず話し始める。どこで笑えばいいんだ、と思いながら男は女の話を聞いた。女はとくに話に落ちをつける気はないらしかった。とにかく来いと言う。言葉ばかりは慇懃に、それでも有無を言わせない視線で。いいよ、と男は答えた。男には騙し取られるほどの金もなく、むしろマイナスがかさんでいく一方だったから、警戒する必要も乏しかった。残る身の安全については、男はもとから大した興味を抱いていなかった。

 途端、女はひざまづいた。渋谷のスクランブル交差点の真ん中で。
 これはさすがに注目を引く。何十というスマートフォンが二人に向けられ、シャッターが切られるのを男は感じる。

 女は靴に押しつけた額を上げる。
「許す、と」
「…許す」
 これはどういう趣向のプレイだろう、と男はもはや感心していた。

 人が居ないところに行きたい、と立ち上がって女は言った。おまえが連れていくんじゃないのか、と男はとっさに呆れてしまった。しかし男は自分でも意外なことにどうやらその気になっているらしかった。男は迷った末、友人に車を借りて海まで女を連れて行った。

 冬の海水浴場は期待通りに閑散としている。男は冬は嫌いだが、冬の海は好きだった。港町が故郷である所為かも知れない。
 今のうちに見納めておいてください、と女は言った。大げさだな、と男は笑う。女は目を逸らして口をつぐんだ。
 その態度を見て、まるでこれから絞首台に導かれるようだ、と男は思った。
 それを後日聞かされた女は、良い勘ですねと笑ってみせた。

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