扉のない部屋があります
限りなく白い部屋です
同じく白い小さな二つのベッドと
透明な仕切りだけがあります
夏です
蛙が鳴きやみ
蝉がまだ静かな
わずかな時期です
「幸福」側には子どもが二人
彼らには名前がありません
並んですやすやと寝息を立て
つかのまの夢を見ています
一人はよく泣き
一人は静かでした
「夢」側には大人が二人
彼らは名前を考えています
手をつなぎ同じものを見て
限られた幸福を味わいます
二人はじきに二人ではなくなります
泣かなかった子どもは一人を忘れ
泣き続けた子どもは独りになりました
「幸福」は意味を変えました
「夢」に願いを託しました
醒めないうちに終ることを
泣かなくなった子どもはずっと
夢に見続けています